2026年01月29日
今年も新たな1年が始まりました。
私は、2026年の経済情勢を大づかみに捉える上で、以下の3点が特に重要であると考えています。
(1)インフレの継続
(2)政策金利の上昇
(3)国際政治リスクの増大
(1)インフレの継続
2023年以降、日本では平均して約3%程度のインフレが継続しています。
1990年代後半から2010年代にかけて長く続いたデフレの時代は完全に終了しました。
中小企業経営においても、インフレの時代への適応は不可避です。
売上の向上、社員の賃金上昇を実現できなければ事業の継続そのものが困難になる時代に入ったと言えます。
価格転嫁、付加価値の創出、生産性の向上といった課題に、これまで以上に正面から向き合う必要があります。
(2)政策金利の上昇
政策金利は、1990年代後半に0%台へと低下し、2010年代にはマイナス金利も導入されました。
長らく「金利のない時代」が続き、企業にとっては資金調達は比較的容易なものとなっていました。
しかし今後は、金利上昇局面において、借入に伴う利息負担を明確に意識せざるを得ません。
中小企業にとっては、
⑴金融機関からの借入を行うか否か、
⑵借入を行う場合、その規模をどの程度とするか、
⑶調達した資金をいかに具体的な成長に繋げるかといった点について、デフレ期以上に真剣に検討しなければなりません。
(3)国際政治リスクの増大
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は未だ終結が見えません。
中東では、イランやイスラエルを始めとする諸国が、国内外に多くの不安定要因を抱えています。
中国による台湾侵攻の可能性や、北朝鮮のミサイル問題も継続的なリスクです。
加えて、ベネズエラへの軍事作戦やグリーンランドを巡る領有要求、国際機関からの脱退表明など、
アメリカの行動も予測困難性を増しています。
これらの行動の是非はさておき、国際政治上の出来事が発生するたびに、
日本国内の経済情勢が大きな影響を受ける状況が常態化しています。
特に、昨年のアメリカによる「相互関税」はその影響の大きさを改めて認識させる出来事でした。
国際政治の動向がいつ、どのような形で自社の経営に悪影響を及ぼすか分からないという前提に立つ必要があります。
おわりに
このように書き連ねると、年頭から重苦しい印象を与えてしまったかもしれません。
しかし、経営者は、いかなる時代、いかなる環境下にあっても、その事業を継続させ、発展させていかなければなりません。
むしろ、このような時代だからこそ、
松下幸之助氏が説いた「不況なお良し」「逆境さらに良し」という言葉がより重みをもって響きます。
知恵を出し、積極的に行動し、一見して不利に思われる環境を逆に活かす。
変化の時代・逆境の時代こそチャンスのときであり、この機会を捉えて会社を発展させていきたいと、私は考えています。
2025年12月29日
今年も1年が終わろうとしています。
1年の終わりに、この1年を振り返ってみると、今年も様々なことがあったように思います。
今年1月の社長ブログでは、「日に新た」という松下幸之助さんが好んで用いた言葉に触れました。
今、1年が終わるにあたり、「脚下照顧」という言葉で、今年の1年を締めくくりたいと思います。
「脚下照顧」とは、自分の足下をよく見よ、という意味の禅宗の言葉です。
松下幸之助さんは、『続・道をひらく』(PHP出版)でこの言葉を引用して、
「この際、家をきちんとし、周囲を整え、姿を正し、心を定めて、お互いの繁栄のために、
我、何をすべきかを、静かに考えてみたいものである。」と結びました。
松下幸之助さんが良く口にされていた「自己反省」という言葉にも通じる言葉だと感じます。
1年の終わりに、自分の足下をよく見つめ直し、自らを省みたいと思います。
2025年11月25日
小説家の塩野七生さんといえば『ローマ人の物語』(新潮文庫)が代表作ですが、『ギリシア人の物語』(新潮文庫)という作品も書かれています。
この『ギリシア人の物語』では、(1)ポリス連合による「ペルシア戦争」の勝利による古代ギリシア世界の最盛期の到来、(2)二大強国であるアテネとスパルタによる「ペロポネソス戦争」の結果としてのアテネの凋落と、勝利したはずのスパルタの速やかな衰退、(3)マケドニアのアレクサンドロスの東方遠征による大帝国の形成とその瓦解、などが描かれています。
特に印象的だったのが、ペルシア戦争後に、偉大なる指導者であるペリクレスの下で、民主政を有効に機能させ、全盛期を迎えたはずのアテネが、そのペリクレスの死後、わずかな期間で、スパルタに完膚なきまでに敗北してしまい、しかもその後二度と国家として立ち直れなかったという、余りに落差の大きな凋落振りでした。
ペロポネソス戦争の敗因として最も大きなものは、スパルタとの戦争中であるにもかかわらず、スパルタとは何の関係もないイタリア南部のシチリア島へ無謀ともいうべき大遠征を行い、その上、戦略・戦術双方の拙さから大敗北を喫し、兵力・戦力の大部分を失ってしまったことでした。
後世の人間の目からは、なんと余計なことをしたものかと思います。
ペロポネソス戦争開戦当時、経済力も含めた総合的な国力において、アテネは、スパルタを大きく上回っていたのであり、スパルタが誇る最強戦士団との正面決戦を避け、防御と持久戦に徹してさえいれば、特別なことをせずとも、アテネは最終的に勝利していたものと思われます。
そうであるのに、シチリア遠征のような悪手を打って自滅してしまったのはなぜだったのでしょうか。私は、ペリクレスというリーダーが余りに優秀で有能すぎたために、後の時代のリーダーとなるべき人材が育っていなかった上、アテネ市民もペリクレスに依存しすぎていたため自分たちで冷静に物事を考える能力や姿勢を失っていたことに大きな原因があるのではないかと思います。
古代アテネの繁栄と没落は、国家あるいは組織において、重要な判断は感情に流されず冷静かつ長期的見通しのもとになされるべきであることを教えてくれるものと思います。
2025年10月30日
京セラの創業者である稲盛和夫さんは、非常に多くの著作を遺されました。
稲盛さんの代表作としては、『生き方』(サンマーク出版)を挙げる人が多いと思います。
私も『生き方』は稲盛さんの考え方が集約された大変良い本だと思いますが、私は、稲盛さんの著作の中で最も読むべき本は『稲盛和夫の実学 経営と会計』(日経ビジネス人文庫)だと考えています。
『実学』の序章は、創業初期の京セラにおいて、経理・会計の素人である若き日の稲盛さんが、外部から招聘したベテラン経理部長に対して会計上の疑問をぶつける場面から始まります。
稲盛さんの疑問に対して、会計のプロである経理部長は、会計の教科書的観点から説明を行いますが、稲盛さんは通り一遍の説明には納得せず、何年にもわたって疑問を追及していきます。
遂に経理部長は、稲盛さんの指摘が会計の本質を突いていることに気が付き、以後稲盛さんの会計についての考え方に沿って京セラの会計システムを整え、京セラの驚異的な成長を支えていくことになります。
このエピソードを始めとして、『実学』を読むと、次から次へと数字に対する稲盛さんの厳しさを示す考え方やエピソードが語られていきます。
稲盛さんと言えば、心の正しさや人としての生き方を大切にする経営者というイメージがありますが、それは稲盛さんの半面あるいは表の顔であり、私としては、この『実学』を読んで、数字に対する徹底的な厳しさや物事に対する一切の妥協の無さが稲盛さんの本質だと感じました。
『実学』は、1998年(平成10年)の出版ですが、その内容は古びるどころか、むしろデフレが収束しインフレの時代に再突入した現在の日本でこそ、より一層経営者に対して、どのような考えに立って経営を行うべきかの正しい指針を示してくれるものだと思います。
ぜひ『稲盛和夫の実学 経営と会計』をお読み頂くことをお勧めします。
2025年09月29日
皆さんは、自分を器用な人間だと思いますか、不器用な人間だと思いますか。
不器用であるよりも器用な方がよい、要領が悪いよりも要領が良い方がよい。一般的には、そう思われていると思います。
しかし、私は不器用なことや要領の悪いことは、長い目で見れば決して悪いことではないと考えています。
経営コンサルタントの小宮一慶さんは、『「一流」の仕事』(日経ビジネス人文庫)でこのように語っています。
「一流になる人は、不器用な人が多いと思います。一人前になるのに時間がかかるので、
自分が人よりも優れていないことを若い頃に認識します。
そういう人ほど、一人前になってからもコツコツと努力を続けます。
不器用で時間がかかって一人前になった人は、早い時期に一人前になって満足している人をどこかで抜き去って、さらに努力を続けている間に一流になるのでしょう。」
また、元中日ドランゴンズ監督の落合博満さんは、『采配』(ダイヤモンド社)で、このように語っています。
「どんな仕事でも、ひとつの技術を身につけていく作業は地味で、相当の根気も必要になる。
技術を身につける際、習得するスピードが速いと、「センスがある」と評されるこことがある。
ただ、これは昔から指導者の悩みの種と言われているのだが、飲み込みの早い人は忘れるのも早いことが多い。
一方、内心でいらだつくらい飲み込みの悪い選手ほど、一度身につけた技術を安定して発揮し続ける傾向が強い。
彼らの取組みを見ていると、自分でつかみかけたり、アドバイスされた技術を忘れてはいけないと、何度も何度も反復練習している。
自分は不器用だと自覚している人ほど、しっかりと復習するものなのかもしれない。
技術事に関しては、飲み込みの早さが必ずしも高い習得率にはつながらない。
だからこそ、じっくりと復習することが大切というのが私の持論だ。」
このように、お二人とも、経営コンサルタントと野球監督という異なる立場から、努力や反復練習を積み重ねることの大切さを説かれています。
不器用な人間が、自らの不器用さを自覚し、その不器用さと向かい合い、たゆまず、努力を積み重ねる先に、真の実力が身につく。
不器用であることは悪くない、そのように私は思います。

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員
昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士