2026年03月24日
「想定外の事態」という言葉があります。
同様のニュアンスの言葉として、「未曾有の危機」「百年に一度」などの表現も用いられます。
近年の日本および海外において、こうした言葉が使われた主な出来事には次のようなものがあります。
・1991年 バブル崩壊
・1995年 阪神・淡路大震災
・1995年 地下鉄サリン事件
・2001年 アメリカ同時多発テロ
・2008年 リーマンショック
・2011年 東日本大震災・福島第一原発事故
・2018年 西日本豪雨災害
・2020年 新型コロナ禍
・2022年 ロシアによるウクライナ侵攻
・2024年 アメリカによる相互関税
これらは、あくまで一部に過ぎず「想定外」などと表現された出来事は他にも数多く存在します。
直近でも、現在進行中のアメリカによるイラン攻撃は、
世界中の多くの人にとって「想定外の事態」であったと言えるでしょう。
このように振り返ると、「想定外の事態」や「百年に一度の危機」は、
実際には、数年おき、あるいは毎年のように繰り返し発生していることが分かります。
こうした事態は、中小企業の経営にも大きな影響を及ぼします。
もちろん、いつ、どこで、何が起こるかを具体的に予測することは困難です。
また、それに備えた事前の準備を行うことも容易ではありません。
しかし、少なくとも、「想定外の事態は常に起こり得る」と想定することは可能です。
この認識と心構えが、不確実な時代における経営の出発点ではないでしょうか。
「想定外の事態」に慌てない経営を日頃から行いたいものです。
2026年02月25日
スティーブ・ジョブズの有名な言葉です。
直訳すれば「飢えていろ。愚かでいろ。」となりますが、非常に味わい深い言葉であり、
日本語に訳すとしたら、幾通りもの訳が成り立ちそうです。
「hungry」には、現状や小さな成功に満足せず、未来や成長への渇望を持ち続ける、
「foolish」には、先入観や固定観念にしばられず、
常識や社会通念にとらわれないなどの意味が込められているのだと思います。
ただ、私は、この言葉のポイントは、動詞が「be」ではなく「stay」である点にあると思います。
「be」だと、単に現在の状態として「そうある」という意味になります。
これに対し、「stay」という動詞を用いることにより、
その状態に意志的・意識的に「留まり続ける」というニュアンスが強調されていると感じます。
人間は、意識していなければ、年齢や経験を重ねるにつれて、初期の渇望感を忘れて小さな成功に満足してしまう。
また、自分は物事が分かっている、何でも知っていると思い込んでしまう。
ジョブズのこの言葉は、こうした人間の傾向を戒め、意志的・意識的に、「hungry」であり、
「foolish」の状態に「留まり続ける」ことを呼びかけているのではないかと考えます。
私も、生涯、hungryでfoolishで居続けたいと思います。
2026年01月29日
今年も新たな1年が始まりました。
私は、2026年の経済情勢を大づかみに捉える上で、以下の3点が特に重要であると考えています。
(1)インフレの継続
(2)政策金利の上昇
(3)国際政治リスクの増大
(1)インフレの継続
2023年以降、日本では平均して約3%程度のインフレが継続しています。
1990年代後半から2010年代にかけて長く続いたデフレの時代は完全に終了しました。
中小企業経営においても、インフレの時代への適応は不可避です。
売上の向上、社員の賃金上昇を実現できなければ事業の継続そのものが困難になる時代に入ったと言えます。
価格転嫁、付加価値の創出、生産性の向上といった課題に、これまで以上に正面から向き合う必要があります。
(2)政策金利の上昇
政策金利は、1990年代後半に0%台へと低下し、2010年代にはマイナス金利も導入されました。
長らく「金利のない時代」が続き、企業にとっては資金調達は比較的容易なものとなっていました。
しかし今後は、金利上昇局面において、借入に伴う利息負担を明確に意識せざるを得ません。
中小企業にとっては、
⑴金融機関からの借入を行うか否か、
⑵借入を行う場合、その規模をどの程度とするか、
⑶調達した資金をいかに具体的な成長に繋げるかといった点について、デフレ期以上に真剣に検討しなければなりません。
(3)国際政治リスクの増大
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は未だ終結が見えません。
中東では、イランやイスラエルを始めとする諸国が、国内外に多くの不安定要因を抱えています。
中国による台湾侵攻の可能性や、北朝鮮のミサイル問題も継続的なリスクです。
加えて、ベネズエラへの軍事作戦やグリーンランドを巡る領有要求、国際機関からの脱退表明など、
アメリカの行動も予測困難性を増しています。
これらの行動の是非はさておき、国際政治上の出来事が発生するたびに、
日本国内の経済情勢が大きな影響を受ける状況が常態化しています。
特に、昨年のアメリカによる「相互関税」はその影響の大きさを改めて認識させる出来事でした。
国際政治の動向がいつ、どのような形で自社の経営に悪影響を及ぼすか分からないという前提に立つ必要があります。
おわりに
このように書き連ねると、年頭から重苦しい印象を与えてしまったかもしれません。
しかし、経営者は、いかなる時代、いかなる環境下にあっても、その事業を継続させ、発展させていかなければなりません。
むしろ、このような時代だからこそ、
松下幸之助氏が説いた「不況なお良し」「逆境さらに良し」という言葉がより重みをもって響きます。
知恵を出し、積極的に行動し、一見して不利に思われる環境を逆に活かす。
変化の時代・逆境の時代こそチャンスのときであり、この機会を捉えて会社を発展させていきたいと、私は考えています。
2025年12月29日
今年も1年が終わろうとしています。
1年の終わりに、この1年を振り返ってみると、今年も様々なことがあったように思います。
今年1月の社長ブログでは、「日に新た」という松下幸之助さんが好んで用いた言葉に触れました。
今、1年が終わるにあたり、「脚下照顧」という言葉で、今年の1年を締めくくりたいと思います。
「脚下照顧」とは、自分の足下をよく見よ、という意味の禅宗の言葉です。
松下幸之助さんは、『続・道をひらく』(PHP出版)でこの言葉を引用して、
「この際、家をきちんとし、周囲を整え、姿を正し、心を定めて、お互いの繁栄のために、
我、何をすべきかを、静かに考えてみたいものである。」と結びました。
松下幸之助さんが良く口にされていた「自己反省」という言葉にも通じる言葉だと感じます。
1年の終わりに、自分の足下をよく見つめ直し、自らを省みたいと思います。
2025年11月25日
小説家の塩野七生さんといえば『ローマ人の物語』(新潮文庫)が代表作ですが、『ギリシア人の物語』(新潮文庫)という作品も書かれています。
この『ギリシア人の物語』では、(1)ポリス連合による「ペルシア戦争」の勝利による古代ギリシア世界の最盛期の到来、(2)二大強国であるアテネとスパルタによる「ペロポネソス戦争」の結果としてのアテネの凋落と、勝利したはずのスパルタの速やかな衰退、(3)マケドニアのアレクサンドロスの東方遠征による大帝国の形成とその瓦解、などが描かれています。
特に印象的だったのが、ペルシア戦争後に、偉大なる指導者であるペリクレスの下で、民主政を有効に機能させ、全盛期を迎えたはずのアテネが、そのペリクレスの死後、わずかな期間で、スパルタに完膚なきまでに敗北してしまい、しかもその後二度と国家として立ち直れなかったという、余りに落差の大きな凋落振りでした。
ペロポネソス戦争の敗因として最も大きなものは、スパルタとの戦争中であるにもかかわらず、スパルタとは何の関係もないイタリア南部のシチリア島へ無謀ともいうべき大遠征を行い、その上、戦略・戦術双方の拙さから大敗北を喫し、兵力・戦力の大部分を失ってしまったことでした。
後世の人間の目からは、なんと余計なことをしたものかと思います。
ペロポネソス戦争開戦当時、経済力も含めた総合的な国力において、アテネは、スパルタを大きく上回っていたのであり、スパルタが誇る最強戦士団との正面決戦を避け、防御と持久戦に徹してさえいれば、特別なことをせずとも、アテネは最終的に勝利していたものと思われます。
そうであるのに、シチリア遠征のような悪手を打って自滅してしまったのはなぜだったのでしょうか。私は、ペリクレスというリーダーが余りに優秀で有能すぎたために、後の時代のリーダーとなるべき人材が育っていなかった上、アテネ市民もペリクレスに依存しすぎていたため自分たちで冷静に物事を考える能力や姿勢を失っていたことに大きな原因があるのではないかと思います。
古代アテネの繁栄と没落は、国家あるいは組織において、重要な判断は感情に流されず冷静かつ長期的見通しのもとになされるべきであることを教えてくれるものと思います。

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員
昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士